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仰臥位と腹臥位の関係について(抄録)

睡眠環境学会 発表原稿4

平成27年9月11~12日大阪綿業会館にて睡眠環境学術大会が開催されました。
「仰臥位と腹臥位の関係について」発表しました。
その抄録とパワーポイント補足説明の要約を掲載します。

研究発表(5)

仰臥位と腹臥位の関係について
- 腹臥位補助具開発の指標として -

○中島繁雄 ・ 荒川一成 1)
( 中島メリヤス ・ 足利工業大学 1))

1.はじめに
高齢化が進み、脳卒中やパーキンソン病、慢性疾患にかかったあと寝たきりになってしまう人が増えている。寝たきりにならないための療法の一つとして「腹臥位療法(Prone Position Therapy)」がある。しかし、腹臥位については資料が少なく、また腹臥位姿勢を長時間維持することは健常人でも苦痛を伴いがちになることから、その支援として腹臥位補助具の研究開発をおこない、その一部は本学会でも報告してきた。腹臥位補助具は仰臥位で使用することも可能なことから、安楽な腹臥位補助具を作成するための指標を得るため、安楽と申告された仰臥位および腹臥位における各部位の床面からの高さ(沈み込みに相当))を分析し、仰臥位と腹臥位の関係を検討することを目的とした。

2.方 法
被験者は健康な男性23名(21~29歳)。仰臥位および腹臥位における頭部、胸部、腰部、脚部、左・右上肢部(計6部位)を床面からの高さを測定した(図1)。腰部の高さを基準(固定)とし、他の各部位の高さは被験者が安楽と申告した高さに調整し、その値を記録した。

図1 仰臥位と腹臥位における部位別高さ測定

図1 仰臥位と腹臥位における部位別高さ測定

3.結 果
腰部の高さを基準(固定)とし、頭部、胸部、脚部における仰臥位と腹臥位の床面からの高さを散布図に求めた(図2)。その結果、両臥位間における各部位の高さには相関(相関係数:頭部R=0.87、胸部R=0.89、脚部R=0.88)がみられた。また、腰部の高さを基準としてみると、頭部は全被験者が腰部より高い位置で分布しており、胸部はその多くが腰部より低い位置で分布している。脚部については高い位置から低い位置まで分布し被験者によって異なった。

図2(頭部)

図2(頭部)

図2(胸部)

図2(胸部)

図2(脚部)

図2(脚部)

4.考 察 と まとめ
結果より、仰臥位と腹臥位における各部位別の高さには相関がみられたことから、普通の寝具を使用しても腹臥位姿勢保持に何の問題もないことになる。しかし、実際には多くの問題がある。身体構造によって、仰臥位と腹臥位では敷寝具からの圧力の受け方に大きな差ができる。例えば、仰臥位においては、頭部は後頭骨、胸部は背骨(胸骨)と肩甲骨、臀部は仙骨、尾骨それぞれ硬い骨にまもられている。腰部と脚部間の膝関節はしっかりブリッジ状態を保持し寝姿勢を保っている。一方、腹臥位においては上顎骨・下顎骨・頬骨も後頭骨に比べはるかに柔らかく皮膚も繊細である。腹部には保護するべき骨はなく圧迫されやすい。腰部は身体前部から見ると腸骨棘に護られているが、股関節は前屈しやすく、大腿部は下方に押し下げられ、さらに膝関節で逆に曲げられて脚部は押し上げられる。これらを鑑みて、身体と敷寝具の界面となる安楽な腹臥位補助具を検討したい。

引用・参考文献
1) 中島繁雄、荒川一成:腹臥位療法へのアプローチ「頸椎角度を顧慮した腹臥位補助具の開発」、
足利工業大学総研センター年報、第11号、 pp.131~134、2010.

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会場にて、パワーポイントで補足説明

仮説 「腹臥位の安楽な体位は仰臥位での安楽な体位の裏返しである。」という説がある。
今回の身体各部の高さの測定結果、【腹臥位と仰臥位で身体各部の高さには高い相関がある。】、この仮説を裏付けたデーターと思われる。しかし、実際には仰臥位と腹臥位では大きな違いがある。測定結果に解釈の違いがないか、考察する。

仰臥位姿勢の測定は

図3

図3

[図3]臀部、脚部位置の下に沈下橋のイラストを挿入した。両橋桁の上にブリッジが形成されている。身体測定時の状態はこの沈下橋の状態と考えられる。

腹臥位姿勢の測定は

図4

図4

[図4]臀部、脚部、脚部位置の下に吊り橋のイラストを挿入した。吊り橋は支柱と支柱の間のロープで均衡が保たれている。腹臥位は股関節から膝にかけて下がり、膝から足首にかけて引き揚げられた状態で、吊り橋のロープ状態であると考えられる。

今回の測定は沈下橋の橋桁の高さ(仰臥位)と吊り橋の支柱の高さ(腹臥位)を測定したと考えられる。数値に高い相関があっても両者では次元が異なると解釈できる。故に仮説 「腹臥位の安楽な体位は仰臥位での安楽な体位の裏返しである。」という説は測定値のみからから考察すると間違いである。
次に、仰臥位と腹臥位の敷寝具との接触面の骨格について考察する。
仰臥位においては、頭部は後頭骨、胸部は背骨・肋骨・肩甲骨、臀部は仙骨・尾骨、それぞれ硬い骨に守られている。腹臥位では頭部(顔面)は上顎骨・下顎骨・頬骨、胸部は肋骨、腰部は腸骨棘、それぞれ前者に比べはるかに弱い。又、腹部にはガードすべき骨格はない。
腹臥位の顔面部を考えると鼻の保護、及び、歯根、額関節、頬骨はわずかな圧力でも長時間圧迫されると、変形する恐れがあり、圧力をかけないことが望ましい。また、繊細な皮膚を守り、呼気をすみやかに拡散させる。等の配慮が必要である。
その他の腹臥位の注意点としては、腹部圧迫をしない、腰部は伸びきりにしない、頭部角度(頸椎角度)に注意、よだれ対策にも配慮する、尖足の予防に配慮する、等の必要がある。
その他、仰臥位と腹臥位の大きな違いに寝返りがある。仰臥位では左側臥位から右側臥位迄大きく寝返りできるが、腹臥位では限定的である。
腹臥
上肢、下肢の位置でわずかに変わる程度である。

結論

  1. 腹臥位は股関節と膝関節で曲げられ、仰臥位の裏返しではない。
  2. 腹臥位姿勢の測定は頭部、胸部、腰部、膝部・脚部の測定をすべきである。
  3. 仰臥位の枕と腹臥位のフェース枕は機能的、構造的に大きく異なる。
  4. 腹臥位の寝返りは限定的である。故に、寝返り行動の意義を再確認し、対処するべきである。
  5. これまで述べた諸問題を軽減する、ストレスのない腹臥位補助具の開発が待たれる。

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