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新型コロナウイルスと腹臥位 Ⅴ/ 非挿管患者の腹臥位姿勢の時間についての考察

非挿管患者の腹臥位姿勢の時間についての考察

 

ゴールデンウイークを前に4都府県で緊急事態宣言が発動され、コロナウイルスの脅威に晒され、全国民が不安感を募らせています。

患者数が急激に増えると医療体制も崩壊し、死亡率も増大します。

 

医療従事者の負担の軽減に腹臥位療法が推奨されています

 

COVID-19】 治療/腹臥位(うつぶせ寝)

https://alzhacker.com/covid19-proning/

EDCRAMの解説

COVID-19の主な死亡原因である重度の急性呼吸窮迫症候群(ARD)患者の寝ている姿勢を仰向けからうつぶせに(17~18時間)することで、死亡率が33%から16%に低下。

 

自力で可能

酸素飽和度の低い50人の患者で、腹臥位に切り替えると平均飽和度が大幅に上昇した。

多くの患者は、補助なく自力でうつ伏せになり、追加の人員、リソース、費用はかからない。

酸素供給には注意する必要があるが、酸素と関係なく腹臥位にすることを推奨する。

一般的なプロトコルとしては、仰臥位で30~120分、続いて左横臥位、右横臥位、直立座位で30~120分行うが、体位は患者の希望に応じて決定される。

一般的に、新しい体位では5~10分以内に回復効果が現れる。

患者の呼吸と快適さを改善しない体位を維持してはならない。

65%の挿管率の減少

リンカーン病院救急部に来院した COVID-19 患者 50 例を対象とした症例シリーズで、経鼻カニューレまたは非呼吸器フェイスマスク酸素を使用している間の酸素飽和度が 90%未満であった。

多くの医療センターでは、これらの患者はすべて挿管されていたであろう。 具体的には、多くの医療センターで、低流量の経鼻カニューレに反応しても飽和度が十分でない患者の挿管を含む早期挿管戦略を採用している(これは誤った戦略であり、IBCC3月上旬から警告を発している)。

その代わりに、患者は起床姿勢になるように指示された。 5分以内に酸素飽和度中央値は10ポイント上昇して94%となった。 これらの改善にもかかわらず、18人の患者(36%)が挿管を必要とした(最初の24時間以内に13人、24~48時間以内に3人、72時間以降に2人)。

ほとんどの患者は、体位回転を継続的に行う戦略で管理されているようである(例えば、30~120分は腹臥位で行い、その後、左側脱会位、右側脱会位、直立座位を行う)。

これは驚くべきサクセスストーリーである。 64%の患者が改善し、挿管を回避した。

COPDに対するBiPAPの場合、この65%の挿管率の減少は46%の死亡率の減少と相関している。

簡単に実行できる

覚醒患者のプロニング(腹臥位)は、ニューヨーク市の病院で膨大な緊張の中でも行われていた。 このことは、この技術がかなり簡単に実行でき、非常に困難な状況下でも達成可能であることを示している。

この研究では、大流量の鼻カニューレは使用できなかったようである(大規模な患者急増のため)。 将来的には、より多くのリソースが利用できるようになれば、より高い成功率を達成することができるかもしれない。

この研究は明らかにRCTではないが、パンデミック(世界的大流行)時に介入を適用する現実的な記述であるように思われる。 患者は最初に気管挿管の「早期挿管」基準を満たしていたので、患者は効果的に自分のコントロールとして機能した。

 

腹臥位姿勢の時間

1、上記の例では『仰向けからうつぶせに(1718時間)することで、死亡率が33%から16%に低下。』とあります。

2、前回のブログ『コロナⅣ /非挿管患者の腹臥位療法』で

学術最新ソース

COVID-19患者】非挿管患者における腹臥位療法

【COVID-19患者】非挿管患者における腹臥位療法

『ニューヨークにおいて、50例の対象において、介入前のSpO2が84%に対し、5分間の腹臥位にて、SpO2が94%まで改善されました。』と紹介しています。

 

3、日本の腹臥位療法より、

『看護に生かす腹臥位療法』(*1)

腹臥位にしたとたんに劇的変化 P41

・・Cさんには、再挿管をしないことが決定していたので、対応していた二人の看護師がどちらともなく「腹臥位にしよう」と提案し、半腹臥位療法を開始しました。その際。無気肺となっている左肺を上にした深めの姿勢をとりました。同時にタッピングを約3分間施行しました。その結果粘稠痰の排出があり、SpO2 99%に回復。その後もその日はSpO2は100%をキープし、酸素吸入も3リットル/分に減量することが出来ました。・・・

 

どうしてこのような時間差があるのでしょうか?

肺の機能を阻害している物(痰や水分又は異物)がどのような物か、何処の場所にあるかによって、阻害物質の腹臥位による排出時間により、腹臥位の時間は異なると思われます。

3、の場合・・3分

左肺の気管支に粘稠痰が詰まり、左肺が無気肺になったと考えられ、左肺を上にしてタッピングすると粘稠痰は排出され、肺の機能は改善し、SpO2が99%になりました。

2、の場合・・5分

コロナウイルスにより、肺炎となり水分が肺全体に薄く溜まり、肺の機能が阻害された肺水腫と思われます。

腹臥位5分位で気管支付近の水分が排出され、一部肺機能が改善しSpO2が94%迄改善したと考えられます。

1、の場合・・17~18時間

『看護に生かす腹臥位療法』(*1)で「なぜ体位変換でPaO2が改善するのか?」によると、

  1. 「即時効果」   腹臥位に体位変換すると数分で改善が始まる。改善の程度は小さい。この改善効果は短時間内に仰臥位に戻すと容易に消失する。肺血流が体位変換で移動すること(肺血流の再配分)および背側への荷重が軽減することが原因で生じている」と考えられる。
  2. 「遅発効果」   腹臥位を維持するとPaO2は十数分から数十分で改善し安定する。そして多くの場合、20分以上を経過すると、仰臥位に戻してもPaO2改善した値を保つことが出来る。現在、多くの報告では7~12時間もの長時間にわたって腹臥位を保つことが推奨されている。このように時間の経過した後にPaO2の固定する現象が、「遅発効果」であり、即時効果に加えて「抹消気道の分泌物が排除されて再開通が起り、肺障害領域の肺胞換気が改善する」と考えられる。この「遅発効果」は肺障害が病理学的にも改善される現象であり、腹臥位療法を「治療法」と呼ぶ根拠である。

 

コロナ疾患の腹臥位時間。17~18時間というのは、上記「遅発効果」である程度理解できますが、コロナウィルスの勢力も考慮されなければいけないと思います。コロナの免疫細胞が働き、ウイルスが弱り、肺水症が収まればとの条件を考慮しなければと思います。

 

SpO2・・経皮的動脈血酸素飽和度

PaO2・・動脈血酸素分圧

SpO2とPaO2は相関関係があります。

 

『看護に生かす腹臥位療法』(*1)

編者 川嶋みどり・日本赤十字看護大学 名誉教授

丸川征四郎・医療法人医誠会 医誠会病院

監修 日野原重明・聖路加国際病院 理事長

発行 ㈱日本看護協会出版会