【末尾に医療機関の関係者の方にお知らせがあります】
前回のブログ新型コロナウイルスと腹臥位で記述した、下記の日本離床学会の文,再掲載します。
新型コロナウイルス(COVID-19)患者の離床・・・日本離床学会 www.rishou.org/covid-19-news
新型コロナ症例に対する腹臥位
米国集中治療学会から、新型コロナウイルスの治療に関するガイドラインが発表されました。
人工呼吸を行う患者に対して、 12時間~16時間の腹臥位を推奨するとしています。
ARDS(急性呼吸窮迫症候群)を合併する重症例では、 肺の一部分だけに極度の換気ストレスがかかることを避け、 肺全体での換気を実現することができるため、新型コロナウイルス患者の状態悪化を防ぐ可能性があります。
日本では、まだ長時間の腹臥位を行っている施設は少ないため、
鎮静剤の使用を考慮し、 褥瘡予防(特に顔面頬部・胸骨部・上前腸骨棘・陰茎など)に留意して行いましょう。
(以上 前回のブログ 再掲載)
腹臥位姿勢
腹臥位と言うと一般的には「図-1」を想定します。しかし、腹臥位を研究していくと「図-2」の姿勢は良い面が沢山あります。以後、一般的な腹臥位と区別するため、「図-2」を美しく、優れたうつ伏せ寝と言う意味を込めて、「秀姿腹臥位」と呼称します。
日本ではうつ伏せ寝(一般的腹臥位)が普及しない要因。
- 歴史的・文化的要因:古くから土下座があります。 高貴なひとにひれ伏すとか、屈辱的な礼を表し,良い印象ではありません。この姿勢が腹臥位に似ている為、腹臥位に抵抗があります。又四つ足の動物の真似などしたくないと思う人もいます。
- 睡眠環境の要因:欧米諸国はベッド生活ですが、日本では畳の上の生活です。床より50~60cm高い位置にあるベッド面と、畳の上直に布団を敷いて、うつ伏せ寝になるのでは、気分的にも、衛生的にも畳の上のうつ伏せ寝は抵抗があります。
- 医療現場から要因:患者の容態をを見る時、顔色、呼吸、体温その他の医療行為する時、腹臥位は不十分な姿勢です。
- 寝姿勢からくる要因:一般的腹臥位姿勢「図‐1」では、次の様な苦痛が考えられます。 顔を横向きにしなければならず、肩コリや首のコリ、寝違いをおこさないか、あごが変形しないか、腰が伸びて腰痛にならないか、寝返りがしにくいのではないか、呼吸が楽にできるのか、お腹を圧迫されて苦しくないのか、赤ちゃんが窒息している。等々いろいろな不安が考えられます。
以上の理由により日本では腹臥位に対する認識は非常に低く、
『新型コロナウイルス(COVID-19)患者の離床・・・日本離床学会 新型コロナ症例に対する腹臥位』の末尾の『日本では、まだ長時間の腹臥位を行っている施設は少ないため、鎮静剤の使用を考慮し、 褥瘡予防に留意して行いましょう。』との注意コメントが記載さるくらいです。
「秀姿腹臥位」は従来の腹臥位の欠点を克服します。
これまで十数年にわたり眼科・網膜剥離術後に使われてきた、『腹臥位セット』を使用すると、「秀姿腹臥位」に近い姿勢に成れ、前に述べた 【4.寝姿勢からくる苦痛】が殆ど解決します。
・顔を横向きにしなくも良い。
・従って、肩こり、寝違いが起こりません。
・顎の変形もありません。(あごには圧力は掛かりません)
・腰も伸び切りません。腰痛の心配もありません。
・寝返りがしにくい:確かに寝返りしにくいですが、
仰臥位(上向き寝)は仙骨や背骨や踵の骨のあるところは筋肉への血流も悪くなり、筋肉痛の危険があります、又褥瘡になる確率は高いです。「秀姿腹臥位」ではそのような 骨はありません。従って筋肉痛も褥瘡になる確率は少ないです. 四肢は自由に動きます、従って、重心移動はしています。見た目の寝ている姿は腹臥位で一見変わりがありませんが、重心は絶えず動いています。一種の寝返り行動と思われます. (アクチグラフという測定器で測定すると一晩に約30回位寝返りしていることになります。)
・呼吸が楽にできるのか:呼吸は楽に出来ます。
・お腹は圧迫されないか:圧迫されない構造にしております。
・欠点もあります。頭部の圧力を顔面で受け止めなくてはいけません。慣れが必要かもしれません。
ヨダレ処理が簡単な腹臥位マットに改造しました。
・顔面カバーを除き全て、アルコール消毒液による消毒が出来ます。
・腹臥位になると、よだれが出ます。ヨダレの処理が簡単に出来ます。医療・施設従事者の感染予防に役立ちます。
・腹臥位姿勢につきましては眼科用と同じく、呼吸も寝姿勢からくる苦痛もありません。
体位変換経時変化を測定しました。
グラフ左側の波は測定器をセットして、就床迄の体位を記録しております。中央の立位の波は途中覚醒時の体位を記録しております。このグラフは就寝中、ほぼ100%腹臥位姿勢で居たことを表しています。もし大きな、ストレスがあれば10時から翌朝5時頃まで約7時間もの間、腹臥位では居らません。
コロナ患者の腹臥位
・新型コロナウイルス(COVID-19)患者の離床・・・日本離床学会 『新型コロナ症例に対する腹臥位』
『・・・人工呼吸を行う患者に対して、 12時間~16時間の腹臥位を推奨するとしています。
ARDS(急性呼吸窮迫症候群)を合併する重症例では、 肺の一部分だけに極度の換気ストレスがかかることを避け、 肺全体での換気を実現することができるため、新型コロナウイルス患者の状態悪化を防ぐ可能性があります。
日本では、まだ長時間の腹臥位を行っている施設は少ないため、
鎮静剤の使用を考慮し、 褥瘡予防(特に顔面頬部・胸骨部・上前腸骨棘・陰茎など)に留意して行いましょう。』と説明されています。
日本の「腹臥位療法」における腹臥位時間
脳血管障害・背側肺障害・ARDS(緊急呼吸不全)・拘縮患者・寝たきり高齢者・誤嚥性肺炎・その他の重篤な患者を対象にしています。(Vol.68 看護学雑誌2004.june)
時間は始め15分位から始め、安定したら、1時間くらい午前。午後、1回づつ、5~10日、中には1カ月等の例もあります、そのくらいの腹臥位で良い効果を確認しています。
眼科網膜剥離の手術後の腹臥位
剥離した網膜をガスの圧力で圧着するために、眼内に空気やガスを入れて網膜をその下にある網膜色素上皮に密着させ、網膜裂孔の周囲をレーザーで熱凝固します。
この手術の後は1~3週間程度の「うつぶせ安静」もしくは特定の姿勢の保持が必要です。
腹臥位の維持は網膜剥離の治療で重要なポイントです。医療機関では、できるだけ決められた体位が取りやすいように、枕やクッションの工夫がされています。
我国の腹臥位療法は重篤な患者に対し慎重に短時間の腹臥位を繰り返し長期間を掛けて実行されています。しかし、眼科の術後の腹臥位姿勢はかなりの長時間されていますが。それぞれの医療機関で工夫されているようです。弊社の腹臥位マットは十数年の前から使われ、現在迄に約500セット出荷され、どこかの眼科医で使われています。
コロナ患者の治療に従事されている病院の皆様へ
この腹臥位マットにご興味のある方は、メールにてご一報ください。ご連絡先、担当者様の名前も明記してください。
1施設・1セット、よだれ処理しやすい腹臥位マットを贈呈させて頂きます。
但し、お使いになった使用感(今後の改良研究の為)を知らせ下さい。
今回は3施設様に限定させて頂きます。
参考文献
第11回「腹臥位(うつぶせ)療法 推進研究会と実践の報告セミナー」に出席して
腹臥位補助具の有効性と使用感について・・腹臥位補助具の心理評価(睡眠環境学会 発表原稿 2)